MLBビジネスモデル
今日は大好きな野球の話をしたいと思います!
新型コロナウイルス感染拡大の影響からMLBもNPBも開幕の見通しが立っておらず残念ですが、いつもは娯楽として見ている野球をビジネス視点から分析していきます。
MLBのビジネスモデル図解
MLBが30球団を代表して一括交渉
日本のプロ野球(NPB)では、球団ごとにチケットやグッズ収入を得たりスポンサー契約を締結するイメージがあると思います。人気球団はいつも満席でチケットが取れないけど、不人気球団の観客席はいつもガラガラ、なんて光景ありますよね。
MLBでは、スポンサー契約、キー局との放映権契約、球場外グッズ販売は全てMLBが一括管理します。人気球団は個別契約でも契約を勝ち取れますが、立場の弱い不人気球団は個別契約が難しく、球団格差の拡大を防ぐわけです。
お金持ちの球団はスター選手を獲得して強くなる一方。チーム戦力が偏ると試合がつまんないもんね。
また、個別交渉するよりもMLBが窓口となることで交渉力を高めることができます。MLB全体の収益は103億ドル(2018年)。17年連続で増益となっており、日本のプロ野球の6倍以上の市場規模なのです。では、その内訳を詳しくみていきましょう。
スポンサー契約
2020年現在、MLBは36社とスポンサー契約を結んでいます。MLB機構が代表して契約交渉を行い、収益は全30球団に分配します。
Official Sponsors of Major League Baseball | MLB.com
また、2020年シーズンから全球団のユニホームの右胸にスポーツメーカーのナイキのロゴを入れることで10年総額10億ドル(約1,100億円)で合意しました。MLBの各球団は地元に強く根付いており、ビジネス色が強くなると地元ファンからの反発が強く、歴史的にロゴを入れなかったので今回の決定には驚きを隠せません。
当初、MLBはアンダーアーマーと10年契約を交わしたものの、アンダーアーマーは経営悪化によって辞退。代わって、MLBは新たにナイキと契約を結んだのね。
放映権
キー局との放映権契約はMLB機構が代表して契約し、収益は全30球団に均等に分配します。しかし、人気球団からは不満が出るため、ローカル局との放映権契約は球団ごとに認められています。
MLBとキー局との2021年まで8年間の放映権契約は総額120億ドル、日本円で13兆円とも言われています。
放映権の分配金だけで、球団あたり年間5000万ドル(55億円)の収入って凄いね!ちなみに、阪神タイガースの純利益は約10億円(2018)だよ!アメリカンドリームだね!
✔︎FOXスポーツ 総額42億ドル
✔︎ESPN 総額56億ドル
✔︎TBS 26億ドル
✔︎DAZN 総額3億ドル(3年)
✔︎電通(NHK)総額2.75億ドル(2006〜2009年)
FOXスポーツとは2022年から7年間総額51億ドルで契約延長しました。しかし、TBSは親会社ワーナー・メディアが米通信大手AT&Tによって2018年に買収され、リストラや事業再編に着手していることから、放映権契約延長については未知数。スポーツ専門有料TVであるESPNは親会社がウォルト・ディズニー・カンパニーですが、こちらも契約延長は未定です。
収益分配制度
ローカル局との放映権契約は球団の個別契約となります。例えば、ニューヨークヤンキース(NYY)は自前の地方テレビ局「YESネットワーク」と2042年までの30年総額56億5,000万ドル(6,215億円)の放映権契約を結んでいます。一方で、コロラド・ロッキーズは2020年までの20年総額2億ドルの格安契約。1年あたり9倍もの放映権収入格差が生まれてしまいます。
そうした格差是正のため、MLBには収益分配制度があり、一番基本的なものは、各チームの純収入の31%に課税して徴収し、それを全30チームに均等分配する仕組みです。
でも抜け道もあるの。純収入はスタジアム経費が差し引かれるため、新球場を建設した場合は、その減価償却費がスタジアム経費。この条項により、一番税金を払うはずのヤンキースは、新球場を建てたおかげで大幅な免税となったの。総工費のおよそ1/3が最終的には免税によって賄われると言われているわ。
精鋭部隊〜MLBグループ企業〜
MLBビジネスは4つの精鋭部隊が支えています。
MLB International(グローバルライセンス事業)
毎年シーズンオフに開催される日米野球やMLB開幕戦の東京ドーム開催などを手掛けています。電通への放映権売却額は40億円以上とも言われれおり、日本のメディアがお祭り騒ぎするのもうなづけます。
また、WBC(World Baseball Classic)開催も彼らの功績。第一回大会から大会2連覇を果たした日本代表には第一回大会で26社、第二回大会で56社のスポンサーがつきましたが、日本代表へのスポンサー料は一旦MLBが吸い上げ、日本代表には10%しか分配されませんでした。
加えて、WBCはMLBスカウトの場としても機能。WBCで活躍したダルビッシュ有投手(CHC)、田中将大投手(NYY)、チャップマン投手(NYY)はメジャー移籍しました。
MLB Properties(スポンサー・放映権事業)
キー局との放映権契約、大手企業とのスポンサー契約に携わります。
MLB Advanced Media(オンライン事業)
MLB.comを運営します。1日600万PVの人気サイトです。1球ごとの球速や軌道など再現性が高く、チームや選手の成績などデータが豊富です。1社がホームページを一括管理するため、球団ごとのばらつきがなく統一性があり、システム共通化によりコストも低減されます。MLB.com | The Official Site of Major League Baseball
MLB Network(ケーブルTV事業)
2002年に開設したMLB.TVを運営します。8,000円/年か1,500円/月で視聴契約できます。BtoCビジネスですね。MLB.TV | Live Stream Baseball Games | MLB.com
MLB年俸事情
✔︎MLB 405万1490ドル(4億4,500万円)
✔︎日本プロ野球 3,985万円
MLBの年俸は2年連続ダウンの405万1490ドル(約4億4360万円)。米ヤフースポーツによれば、年俸総額47億ドル(約5147億円)はMLB総収入の約44%で、これはプロスポーツ経営の目安とされる50%を大きく下回っています。
導入前の2003年以前はワールドシリーズで10年間のうち、ニューヨークヤンキースが5度出場4度優勝したの。早期に優勝チームが決まると客足が遠くからこの制度が導入されたのね。
球団価値も高騰中?
MLB球団の買収価額の推移を見てみましょう。
✔︎LAドジャーズ 21.5億ドル(2012年)
✔︎マイアミ・マーリンズ 12億ドル(2017年)
✔︎カンザスシティ・ロイヤルズ 10億ドル(2019年)
✔︎カンザスシティ・ロイヤルズ 9600万ドル(2000年)
元Walmart CEOデビッド・グラス氏は2000年に9,600万ドルで買収したロイヤルズを2019年に10億ドルで売却。なんと、20年で球団価値が10倍以上に高まりました。
2017年には元ヤンキースのデレク・ジーター氏と、実業家のブルース・シャーマン氏のグループはマイアミ・マーリンズを12億ドル(約1270億円)で買収しており、譲渡額は高騰の一途を辿っています。
マーリンズ長年の悩みである脆弱な資金力。ジータ氏らの投資資金が十分ではなかったのか、マーリンズはその後高額年俸選手を売り払うなどお得意のファイヤーセルを展開し、チーム成績は低迷しているね。
さいごに
球団毎の「個別最適」でなく、MLB全球団の「全体最適」を選んだMLBの戦略
放映権・スポンサー契約交渉での圧倒的優位性を得たMLBの高い収益性
MLB.comやMLB.TVなどBtoCコンテンツも充実した抜け目ないマーケティング戦略
高騰する選手年俸、球団価値はいつまで続くか!?
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